アート・レジデンシーの芸術的実践における一時的な時間と場所の関係

Gatari Surya Kusuma

アーティスト自身と、彼らがしばらく滞在する場所との間に、どのように社会的絆を築けるのだろうか。

 

プロローグ

アーティストとして、執筆、研究、そして時折展覧会に参加することを頻繁に実践していることで、アーティストや研究者のレジデンシーの旅をする機会を得ることができます。レジデンス・アーティスト/研究者としての最初の経験は、2015年に台湾のアート・レジデンス・プログラム「Bamboo Curtain Studio」で得ました。その時、私は集団の仲間であるBakudapan –Khairunnisaと一緒に旅をしていました。

 本論文では、この最初の経験を一つの事例研究として取り上げます。レジデンシー機関が、アート・レジデンスの中での芸術的実践のプロセスにどのように大きな影響を与えているのか、またアート・レジデンスのプロセスが機関にどのような価値をもたらしているのか、ということを考えたいと思います。その上、研究旅行の経験を、同様の時間制限のある作品制作の文脈の中に使ってみたいと思います。

まず、質問を指示することから始めようと思います。芸術家、場所、機関の間の交流のプロセスは、どのようにして可能なのだろうか?また、レジデンスという言葉は、一時的または一定期間でその場所に滞在することを意味します。それで、これら3つの側面を含むプロセスは、どのようにして限られた時間の中で起こるのだろうか?

I.

当時、台湾の「Bamboo Curtain Studio」は「公募(オープンコール)」という方法を採用していました。「Bamboo Curtain Studio」、レジデンスを中心とした芸術機関であり、アーティストの作品の制作を促進したりしています。プログラムのいくつかは、スタジオの枠組みの中で行われています。オープンコールを通して、台湾のコミュニティとの共同制作のために、芸術家を招待することができます。その時、私たちは台湾在住のインドネシア人移民労働者のグループとの共同作業を提案しました。力関係、働く労働者、キッチンにある知識など、つまり目に見えないものからキッチンについて語りたいです。

台湾に散らばっているインドネシア人移民労働者のグループと知り合いになりました。そこに2ヶ月間滞在しました。当時、最初の1ヶ月は、研究の文脈を決定するために、新しい環境、つまり都市としての台北とインドネシアの移民労働者のグループを訪問したりしました。翌月、最終的なプレゼンテーションを準備しました。

最初の1ヶ月間は、移民労働者、特にインドネシア人移民労働者と協力している個人、グループ、機関とたくさん出会いました。それに、公園や市の駅ホール(台北駅)などの公共の場でインドネシア人移民労働者に会うという選択は、その後の関係構築の方法を決定づけました。これらの出会いの多くは、Bamboo Curtain Studioが機関として容易にしていました。移民労働者の問題と組織関係はありませんが、移民労働者との共同作業、特にアドボカシー活動に携わっている数人との繋がりはあります。

最初の1ヶ月間に多くの人々と出会ったことで、職業上の関係よりも、むしろ友達関係を築くことができました。当初の目的は、台湾のインドネシア人移民労働者のグループと協力することでした。一方、当時は研究をしていることを強調していました。それで、インドネシア人移民労働者のグループを研究対象とし、限られた時間を意識しながら、私たちは新参者として2ヶ月以内にできるだけ深い研究をしたいとやってきました。したがって、最初の1ヶ月が終わった時点で、お互いの関係性が変化していることに気づき、それが選んだ芸術的な選択に影響を与えました。

対話的で共同作業的な芸術的な媒体を選んだのは、研究のプロセスとこれまでに築かれてきた関係性の検討から生まれた決断です。その関係は、友情やリサーチワークのスキームの関係の間で混じてきたものです。私たちは、研究者としての立場だけでなく、ある意図と限られた時間の中で存在し、関係していることを強く意識しているアーティストとしての立場としてもよく考えています。その上で、関係のケアがどのように機能するのかを考える必要があります。これらのことを検討して、パフォーマティブなランチを作り、友達の移民、移民労働者の活動家、そして一ヶ月前から知り合った友達を招待しました。

ランチの間に、台本を用意しました。複数人はガイドの役を担いました。ランチの途中で、ランチの参加者同士の間で摩擦や議論を引き起こすように、意図的に企画されたディスカッションがありました。中国語での会話なので、私と同僚のKhairunnisaは参加せずに、何が議論されているのか、想像していました。

全てが終わった後、招待されたゲストにおしゃべりをしたり、挨拶をしたりしました。二週間後、送別会ランチを行いました。最初の昼ご飯と違うのは、シナリオがなく、一般的な食事の時間のように行われたことです。その昼の間にたくさん写真を撮ったことを思い出しました。この瞬間は、高校最後の定期試験の後で友達たちと別れた時と同じ感情的なものだと思います。それは感動的であり、優しい経験として覚える価値があります。

II. 

 2019年に戻って、同僚のMonikaと私はインドネシアの最北端の島、Morotai(モロタイ)島に旅行しました。シンガポール・ビエンナーレ展覧会の集団出展のために、研究しに行きました。そこに2週間滞在しました。モロタイ島の情報を住民からの視点で教えてくれる知り合いを探し、作品を作るための研究を始めました。

ついに、モロタイ島のプランテーションに焦点を当てている非政府組織を構築している友達の一人に会いました。彼のところに泊まりに行きました。それから、彼はそこの住民の何人かを私たちに紹介してくれました。

私たちは2週間滞在し、そこの住民たちとたくさん出会いました。毎日、一緒に料理をしたり、お店で座ったり、ビーチで寝転んだり、そして、インタビューのために、いくつかの面接対象者の家を訪問しました。到着した当初からインタビューをしたいという目的を説明し、モロタイ島で起こった神話や食べ物の移動の話を収集していました。

違いは、当時、モロタイ島の神話と食物移動についての作品を作りたいという目的が最初からはっきりわかっていたので、どのような関係を築くことに混乱しませんでした。仕事上のマナーは、取材や役割意識の時にもありました。例を挙げると、いつ訪問していいのか、いつしないほうがいいのかを把握することです。また、メモをとったり、仕草の記録をしたりするなど、適切な対策をとることです。

エピローグ

上記の2つの事例は、アート・レジデンス・プログラムを行うことと、確立された機関に申し込むこと、あるいは独立して行うことの違いを示していますが、作品制作という同じ意図を持っています。このことについてさらに議論するために、居住プログラムのを開始を通じて、これまでに、そしてこれから発展していく社会的な絆への視点を磨いていきたいと思います。

 アーティストや研究者がその場所に住むために旅をすると、その場所への愛着を築くことは避けられません。その場所を見たり、近づいたりすることで、芸術的処理における社会的な絆を生み出すための出発点として、物語から、力そのものを表すこと、幾何学的な空間までを考えることと同じです。

一方で、Bamboo Curtain Studioの事例からすると、彼らは機関として場所の価値を上げるように準備をしています。最も重要なことは、彼らが有形物を求めないことです。アートプロジェクトの成功の基準に柔軟に対応し、交渉可能です。確立された機関としての決断は、アーティストが滞在した時に形成された社会的な絆を考える上で重要な判断になります。ギャラリーの壁に無関心に掛けてある作品から、すべての労働を数えて見えることができるわけではないからです。

 2番目の例は、芸術的実践の意図を持っている研究者として、2週間モロタイ島で旅をしたり、滞在したりしたことによって、アート・レジデンス・プログラムを実施する上での制度的なスキームを議論する際に、もう一つのレイヤーとなります。居住地にいる必要性は、研究の必要性として提示されています。

しかし、今回の事例から、フィールド(フィールドワーク)にいる間に構築された関係のオリジナリティーは、数えるべきの成果であることを学びました。Ranciereはそれを「le portage du sensible」と呼び、経験や能力を伝えるために、美学が政治と常に手を携えていくことについて述べています。この場合、政治的なエージェントとなるのは機関でなく、住居の加害者です。そして、空間と場所は美学となります。したがって、政治的なエージェントとしての本体と、美学としての空間と場所、両方の役割を果たせば、必要とされ、由来した場所から生まれる倫理の形として良い結果を生み出します。

 Claire Bishopの著作「Artificial Hells」を参照すると、作品制作のプロセスとしての研究にしばしば寄せられる批判は、美学からの切り離しです。それはまるで、アーティストが作品を作る必要があることを忘れて、リサーチの間に現場での作業のプロセスに没頭しているようなものです。しかし、Ranciereの「作品の感性」の理論を用いれば、これらの美的価値は空間に限らないで、その背後にある目に見えない作業も計算しているのではないだろうか。アーティストの努力だけでなく、彼らの日常の習慣は人間の行動や努力の影響を好む分析のナイフとして、生きながらいくつかの多様な可能性や社会的な絆を築いていきます。

1. Bamboo Curtain Studio is a member of Artist Res, the initiator of the Intra Asia Network for mobility AIR & Artist, regional representative of the International Network for Cultural Diversity, and the Asian Arts Network, country representative for the Asia-Pacific World Cultural Forum. They can design residency programs based on individual needs, such as visiting important exhibitions, performances, and joining arts communities and cultural events.

2. Massey, Doreen. 2005. For Space. New York: SAGE Publishing. Page: 130

 

3. Pink, Sarah. 2012. Situating Everyday Life. New York: SAGE Publishing. Page: 23

引用文献 

Bishop, Claire. 2012. Artificial Hells. London: Verso.

Certeau, de Michel. 1984. The Practice of Everyday Life. London: University of California

Massey, Doreen. 2005. For Space. New York: SAGE Publishing

Pink, Sarah. 2012. Situating Everyday Life. New York: SAGE Publishing